外国人個人観光客(FIT)は日本に何を求めているのか〜ヒアリング調査・「目から鱗」の実態をレポート〜

京福電鉄「嵐山駅」
  NPO法人ツーリズム研究機構(JTRA)は、2013年度、2014年度、2015年度において、日本にやって来た外国人個人旅行客(FIT)に対して、クールジャパンのアイテムとしてのお菓子やお茶、日本酒への印象などのほかに、日本への観光旅行の実態をヒアリング調査した。直近において、「爆買い」に代表される団体旅行以外に急増する個人旅行客の意識・行動、地方への観光客誘致の要因などは、旧来からの観光業界常識を覆す「目から鱗」の実態を明らかにして、関係者に強烈なインパクトを与えました。
 今でこそマスコミ等において取り上げられることが多くなって注目を集めていますが、当時から、既にこの実態を国や自治体の地域観光政策や観光関連業の経営戦略に取り入れ、効果的な対応を始めています。
 その調査事業全体については概要を既に別途掲載していますが、日本に来られた外国人個人観光客(FIT)へのヒアリング調査の内容は次のとおりです。
※調査方法
@外国人個人観光客(FIT)の多くが来訪する京都の嵐山において、観光客のターミナル施設が豊富な京福電鉄「嵐山駅」内の特設ブースに迎えてヒアリング調査を行った。
A毎年、100人以上をキャッチして、英語、中国語、韓国語などで、お菓子の試食やお茶・お酒の試飲のほか、来日観光の行動や意識について、談話形式でのヒアリング調査。
B外国語に堪能な調査員のはか、調査のオーガナイザー(主催責任者)やディレクター(調査統括者)なども加わって、四方山話・茶飲み話的に自由に本音を聴き取ることができた。

外国人観光客ばかりの嵐山駅周辺

ヒアリング調査スタッフへの事前オリエンテイリング
●2013年度ヒアリング調査の概要
1.実証実験の目的
 それぞれの地域で農産物とパティシェ・菓子職人をマッチングさせることで開発したSweat(菓子)を、FIT(外国人個人旅行者)に、茶菓子=Japanese Tea &Sweet Set として提供し、その評価(素材・調法・物語などへの関心・美味しさ・見た目の美しさ・感動)を探り、今後の海外展開への一歩とします。 また、各地域のツーリズム資源への関心(行ってみたいという動機付け)を調査することによって、地域のFIT誘客戦略の足がかりとします。
 また、この実証実験の方法そのものが、メディア(FITへの情報発信)として機能するかを検証することも目的です。 機能することが、実証できるならば、JK-WAZUKAそのものの価値を発掘することとなり、今後の橘街道プロジェクトの情報発信の拠点として活用します。。
2. 実施方法
 嵐電嵐山駅にて電車を下車したFITに対し「ちらし」を配布する。菓子を並べたカウンターで、それぞれの菓子を説明し、選択してもらう。(選択理由の調査)
・菓子の説明カード(素材・調法・特色など)
・和束茶(ほうじ茶・煎茶)と菓子を提供(味・好みの調査)
・各地域のツーリズムプログラムのボードを提示(関心度調査)
3. テストで提供したお菓子
 各地域の農産物(加工品)を素材にした、新しいお菓子を、FITへ選択して頂く。(2月17日のテスト商品)今回、京都地区の菓子については、調査地という身近さ・認識度から、対象からははずした。
4.調査結果・分析
(1) 外国人個人旅行客(FIT)の属性
 オーストラリアはアジア地区とした。 関西空港へのLCC(Low Cost Carrier=格安航空会社)の乗り入れにより、無造作(アトランダム)に集客したにもかかわらず、オーストラリア(23人)、台湾(16人)、香港(16人)と半数以上を占める結果となった。関西でインバウンド関連商品を考える場合、このLCCの存在は無視できない状況となっている。 注目すべきは、英国の12人でアメリカの4人をはるかに超えている。要因として、香港が英国領だったということもあり、キャセイ航空、英国系LCCなどで、低価格で香港へ来ることができる。そのあと、エクスプレス香港で関西へ来られる(9、800円)というケースが想定される。 また、英国の「Tea」文化から「日本茶」に対する関心が醸成され、JK-WAZUKAへの来場のインセンティブが働いた可能性も考えられる。 欧米系(オーストラリアを含む)は、家族(3人)の場合もあるが、2人連れ(カップル)が最も多く、アジア系は4人程度のグループが目立った。
 日本でどこに行くか。(どこへ行ったかは)という質問に対し、多くは、まず初めに京都と答えた。京都を楽しみたいということで、スケジュールを組み、他の都市よりも長く滞在する傾向にある。 シーズンが逆のオーストラリの人の多くは、10日間〜1カ月という期間で日本滞在を計画し、ニセコ、白馬でのスキーを取り入れており、最後に京都へ戻ってきた(関空から帰国)という。また、高山、金沢や直島(瀬戸内)など、地方で日本の文化を楽しんできたというカップルもいた。宿泊はゲストハウス(民宿)で、「日本の『おかあさん』最高!」と話しがはずんだ。 彼らは、ラオスやベトナム、タイ、そしてアメリカで出会ったオーストラリア人と同じように、東南アジアやアメリカと同じスタイルで日本を楽しんでいるようだ。 昨日、京都マラソンを走ってきたという台湾人グループがいた。3回目の日本で、マラソン集後は「食」と決めていたようで、これから大阪へと行く予定だと。
 アジアの旅行者は、FITであっても、4人〜6人のグループの場合が多い。 この調査に関し、台湾の方は「リピーター」と「連れられて」きたとの組み合わせが多い。 注目すべきは「香港」からの旅行者で、2人〜4人のグループで、2回以上のリピーターである。日程は3日〜5日でJRパス(7800円で倉敷までの新幹線にも乗車可能)を持ち、大阪を中心に、徳島の「かずら橋」、神戸の「有馬温泉」と具体的なプランで行動中であった。発信した地域の情報には、「スマホ」ですぐに確認するなど、旅のエキスパートが多いと感じた。レンタカー利用の計画者も目立った。農業などの体験に敏感に反応した。 たまたまではあろうが、英国人の2組が「農業」体験に関心を示し、その1組は岐阜で10日間程度の農業ステイを行っていた。 東京マラソンへ参加するためシカゴから来日した訪日がはじめてという女性の4人組は、「日本=京都、そして東京マラソンでしょう」と答えた。
 FITを中心に「キャンペーン」ちらしを配布したため、ツァーでの訪日が多い中国や韓国が少なかったように感じる。白馬から戻って2人組。「明日のフライトでシドニーへ戻る」とのこと。「ごぼう」が美味しい、「どこで買えるのか」と。
東京マラソンを走るというシカゴからの4人組。 干し柿が関心のまとに。「日本人はマラソンの時は「餅」ということで、DANGOを。 12回目の日本。美味しいから。今回は京都と有馬温泉へ宿泊する。六甲山へ登って「雪だるま」を作って孫へメールしたい」と。六甲ケーブルの行き方を尋ねられた。 女性に連れられ金沢、高山、倉敷など1カ月のホリデーを楽しんだ。「最高は直島の「民宿」」と。 「茶の和束へ今から行きたい!どのようにいけば良いか。宿泊施設は、民宿は・・・・」
(2)渡航者の声 (滞在日数について)
・ 香港や台湾の渡航者は3泊〜5泊滞在する方が多い。
・ ヨーロッパ、オーストラリアからの渡航者は、2週〜1カ月滞在する方が多い。
・ 京都には大阪に比べ2日以上長く滞在する傾向に (滞在中の楽しみ方について)ある。
・京都では歴史、文化をテーマに散策する方が多く、金閣寺や竹林、モンキーパークが人気であり、市内に関心を持っている方は見受けられなかった。
・夕方には京福嵐山駅以外にライトアップがきれいなスポットを探す人もいた。
・ 京都に滞在した後は、帰国前にLCC発着のある関西空港のある大阪で滞在するアジア圏の方が多く、大阪ではショッピングを楽しみにしているようだ。
・ 一眼レフのカメラを持っている方が非常に多い。
・ タブレットを持ち、次に行く場所を探したり、お勧めはないかと、自由な行動をする傾向があるように思えた。
・ ヨーロッパ系は、カップルが多い。アジア系の方は友人や家族とのグループが多い。
・ 宿泊ホテルは長期滞在であればある程、ゲストハウスを利用している。
(3)Q&A毎のまとめ
質問1なぜ、このお菓子を選びましたか。

 回答者の半分が、お菓子を選んだ理由に「見た目」と答えた。「見た目」というより、むしろ「第一印象」のようだ。
 「Japanese Vegetable」と丹波の「ごぼう」の現物を用意したため、関心を集め、さらに、試食も提供したので「ごぼうかりんとう」を選んだ方が多い。 「ごぼう」は外国では難しいという事前情報(農業普及センターなど) だったので、この結果に「驚き」!である。 これは、プロモーションのヒントとして注目すべき点である。「FITが初めて見る」素材を提示し、「試食」と組み合わせることは効果的である。
 素材としての「干し柿」は、欧米系の方々に注目された。カナダの女性シェフは干し柿を非常に気に入り、どうしても欲しいということで販売した。帰国してお菓子をつくりたいと話していた。10回以上来日したという香港人は、中国東北部にも「干し柿」に似たものがあると。そして、「DANGO」のよもぎタイプの「独特の香り」を「亀の卵」と似ていると評していた。
 自国の「○○」と似ているという評価は、我々が海外で、未知なるものに対する評価と同じである。
質問2このお菓子の産地を知っていますか。
 この質問は、丹後、但馬、丹波がFITへどの程度浸透しているかを目的にした質問であるが、予想と同じくに、「9割」近くの人が知らないと答えた。地域名ではなく、豊岡、福知山、篠山、久美浜、宮津など都市名もあげた結果は、3割弱の方が知っていると答えた。
 天橋立=宮津、環境都市=豊岡、篠山=日本の田舎という台湾・香港で紹介されている地名に反応した。「福知山を花火で事故があった町」と答えた台湾、香港の方がいた。
質問3このお菓子を食べた感想は
 日本的と言う回答を期待したのであるが、意外と少なかった。DANGOの保管方法を間違え、固くなってしまったため、初日でなくなったのが原因である。「日本らしい」とまた、美味しいという評価は高いことを確認した。「よもぎ」のにおいも「OK」っていう言葉が変えてくる。案外、こんなところで「異文化」を感じているのかも知れない。
一番の人気は「ごぼう」で欧米、アジアとも合格点、「売っていないのか」という質問が多かった。香港のレストランオーナーやカナダのシェフなどいわば「プロ」「食通」の香りを持つ方々には「干し柿」が関心を集めた。小片を試食してもらうと「NICE」「Good」という声が戻り、カナダの女性シェフのように、「ぜひ売ってほしい」という方も現れた。
 若いグループにとっては、「黒豆ショコラ」は、美味しいとの評価で、国内外問わずに販売が可能であろう。「TANGO KUROMAME SHOP」など、マーチャンダイジングを研究し、アジアでの展開は面白いと思われる。
 日本酒の入ったCristallisee、干し柿のFabre-ton Of The Dried Persimmonは、ともに完成度が高く、欧州系の方に好評であった。カメラを向けると、「これ、美味しい」と笑顔とCristalliseeを掲げてくれたスペイン人カップルFabre-ton Of The Dried Persimmonを「フランスにも同じタイプのケーキがあるヨ。」と教えてくれ、最後に、日本の法が美味しい!とフランス人ふたり
質問4どのお菓子の産地に関心がありますか。
 この質問は、ヒァリング中に言葉が途絶えて来た時に、尋ねる「つなぎ質問」で、あまり意味のない質問であるが、パンフレットなど見ながら、話の展開に準備した内容である。「SAMURAI」と「Queen=姫」のKIMONOを着て、城の天守閣(Top of castle tower)で、グランドフロアから望遠(Zoom)de写真を撮ることや、関西の五芒星の不思議や、美山の茅葺民宿(Guesthouses)の話をした結果、丹波(京都)に、半数近くの関心が集まった。
質問5その中で、どのプログラムに関心がありますか。
  丹後「久美浜」のプログラムは、ジオパークの海岸美をカヌーから水鳥の視線で、そしてバイクで鹿の視線で、最後に冑山へトッレキングを行い、甲山から鳥の視線で楽しもうというジオスポーツ体験である。それに、豪商稲葉本家での写真撮り、英国人杜氏緒の交流、花の寺如意寺の英語説法を組み入れた。
 和束は、京都府景観資産第1号の茶畑の中を歩く「CHABATAKE-WALK」と茶摘み、茶香服などの体験を組み入れた。 中国で英語を教える大学教授は、中国とは違う日本茶独自の文化や味を体験したいと 来日し、和束の茶畑プログラムに非常に関心を示し、それに加え、日本独自のお茶の儀式があればぜひ学びたいと語った。 和束のプログラムに関しては、「これはいつ日本に来ると体験出来るのか?」と熱心な質問が多く、「明日のツアーに参加するか」というような、現地対応型のプログラムで、十分に集客できると感じた。
 久美浜プログラムに関しては、パンフレットなど紙媒体、またHPでの掲載により集客できることが実感できた。
 他地域もこのような、FITが「関心を示すプログラム」を制作しなければならない。
質問6あなたの国は。日本に来られた回数は
今回の「嵐山FIT対象の調査」では、35%がリピーターであり、10回以上訪日したヘビーリピーターが10%近いことが分かった。(嵐山の性格上、日本が初めてという方は、かなりの確率で嵐山へ来ることと思われる)。FITが集まり、経験した「生情報」を交換する「場」を創出することができれば、そして各地域が、FITが望むプログラムを提供できるならば、「嵐電嵐山駅」は、香港「蘭桂坊(ランカイフォン)」(最近はSOHO地区へ移っているようではあるが)のような外国人に特化したエリアが誕生し、FITの日本国内旅行への誘致システムが構築されれば、橘街道で結ばれる各地域への誘客が可能になるのではないでしょうか。
5.窺い知れるインバウンド、海外からの個人旅行者(FIT)の動向
  最近のインバウンド(海外から日本への旅行)に関する情報は、年間1,000万人を超えて、主力としてアジア方面からの団体客が買物を目的に行動している等のTV・雑誌・新聞などでの報道が目立ち、国内の関係者も特に彼らたちの動向に注目しているところです。日本人の一昔前の海外旅行がそうであったように。
 ところが、有名観光施設中心の団体旅行を早急には期待できないであろう国内各地へのインバウンド対応策を考える上で、今回の調査結果は大変重要なことを指摘している。既に数多く日本にやってきている個人旅行者(FIT)たちのツーリズム動向は、日本人の海外旅行に対する考え方を超えて進んでしまっているということを痛感させられる。日本人がそうであったように、言わば観光後進国の人たちもそうであるとの思い込みが少なからずあって、そのような常識に頼り続けることで、今後のインバウンド戦略が効果的でなくなる事態が懸念されるのではないでしょうか。
 海外の人たちの方が、観光・ツーリズムに対する意識が私たち日本人の想定よりも遙かに先進的であることをうかがわせているのです。海外からの個人旅行者(FIT)100人に直接ヒアリングした次の「実証実験」の概要からも読み取れます。(2014年3月)
●2014年度ヒアリング調査の概要
1.調査の概要
 前年度の調査事業において、橘街道に係わりのある地域の農産物を材料とした「菓子」を開発し、嵐山においてFIT(外国人個人旅行者)を対象に評価(海外に販路を求めるいわばニーズ調査)を聞いた。結果、関西の多くの観光関係者(観光学の専門家(大学関係者)、観光行政関係者、そして観光産業関係者)から「目から鱗」という「声」が聴かれ、それぞれの地域、自治体、観光業者のインバウンド戦略に役に立つことができた。
 今年度は、「地域への誘客」の手法開発、及び「海外向け商品開発のためのマーケティングリサーチ」の手法開発を目的に、「FITへのインタビュー調査」を実施した。
(1)実施した聞き取り調査(対象国)
@無差別に声をかけた結果、25国・地域に及んだ。
A英語での声掛けであるため、20代〜40台の割合が多い。
B無差別の声掛けに対し調査対象の国別割合
※ オーストラリア12名、香港12名、台湾10名、マレーシア8名、フィリッピン7名、米国6名、英国5名と、関西空港のLCC利用者率が反映した結果となっている。上位4ヵ国で49%の割合。
(2) 訪日回数
@調査対象が若くなった(20代45%)のが原因であろうが、初めての訪日経験が約4割を占める。
A年齢とともに訪日回数が多くなる。言わば「日本通」と呼べるのでは。但し、アジアにおいては30代の子供が初めて訪日する「親」を連れてくる「親孝行日本旅行」が目だつ。
※初めて38人、2回18人、3回14人、4回8人、5〜9回8人、10回〜14人の計100人。
(3)今回の滞在中に訪ねた都市・町(地域)
@記述式ではなく「問い合わせた結果であるため、抜けている地域・都市」は多いであろうが、傾向は現れているものと思われる。東京から入国した場合、大阪にはまだ行っていない(行かない)場合もある。関西から入国した場合は、「関西エリア」中心の傾向ではと思われる。しかし、奈良・神戸への訪問が少ない。
A 金沢が「日本の古都」として、リピーターが奈良以上に関心を示す。
B スキーを目的とするオーストラリアからは、ニセコ、信州が人気。
C 滞在期間が長期になる場合は、滞在中に得た情報で石垣島などへも関心を示し訪問。
D 前回の滞在で得た情報で、今回、その地を訪問するリピーターは多い。
E 訪問回数の多い者は、得た情報で予定を柔軟に変更することがある。
※東京56、神戸22、大阪79、奈良13、名古屋10、(京都100)、金沢12、札幌・ニセコ・小樽・富良野34、広島12、ほか。
(4) 今回.気に入った都市・町・地域とその理由
@ 日本の接客が好き(キャビンアテンダント)
A どこもそれぞれの文化があり面白いから好き。
※京都35(嵐山の竹林、伏見稲荷、祇園で着物、モンキーセンターなど)、東京28(秋葉原、代々木公園、渋谷御苑、エクサイティング)、大阪22(ショッピング、食事)、姫路(新幹線駅)、金沢、札幌、奈良、神戸(神戸ビーフ)、宮島など。
(5) 滞在日数について
@90日〜は語学研修(留学)と企業派遣。
Aオーストラリアから夏ホリデーとして北海道訪日客の滞在日数
のスキーが多く、12日〜20日の割合が多い。
B香港及び台湾は3泊4日もしくは4泊5日が一般的である。リピーター回数の多い者は、滞在日数が少ない。
C東京入国で関西を訪問する場合は、5日以上の滞在となるようケースが多い。
※4日まで20、5日〜21、8日〜12、12日〜12、15日〜11、20日〜14、30日〜5、90日〜5。
(6) 情報源
@インターネットはほぼ全員が、ブログや観光データを閲覧。
Aガイドブックは、初来日者に多い。
Bほか、各地の観光案内所(印象は、親切とNGと)、ホテルのフロント(暮らし情報的なものもあった)、友人、この嵐山の調査ポイント(JK/WAZUKA)など。
(7) お土産候補(何をお土産にしますか)
@何か「NEW JAPANESEStyle」的なものを探す。
A予算は、US$3,000ので探す。
Bここで、商品を試食、試飲させれば購入へと結びつく(J’s Soulの事業可能性を実感)。百貨店、空港売店との連携
(8) FITの地方への誘客の可能性について
@次回はどこへ、予定変更のケース。 ほとんどの者が、映像を見せると関心を示す。城崎温泉、和束、那智の寺、桜への関心を示し、タブレッドで確認する。「有効な地方への誘客」手段であると実感した。
2.外国への販路開発に向けたマーケティング調査
(1) 日本酒「宝酒造」4銘柄の飲み比べ。
 カウンターで商品をボトルで展示し、試飲用盃にそれぞれ注ぎ、その都度のそれぞれの第一印象と気に入ったアイテムとその理由、を記入できるようにした。印象、感想に関しては通訳が記入した。
(2) 菓子についてのヒアリング調査。
 対象者に菓子を選んでいただき、試食後にその感想を聞いた。

 日本酒、菓子の調査を通じ、外国へのテストマーケティイングの手法として、定数調査を行う方法として、外国で行う調査より費用対効果の高い手法であると確信した。調査対象をLooksでき、言葉で属性をセグメントできる。実際、調査対象がかなりの知的レベル、富裕層であった。後日、新商品(外国向き商品)の調査を実施する菓子メーカーもあった。(2015年3月)

●2015年度ヒアリング調査の概要 

嵐電「嵐山駅」
  「ヘルシー志向スイーツ」の海外展開向き提案(企画書)作成を目的としたに、FITに人気の嵐山地区において、「ヘルシー志向スィーツ」に対する考え方や好みなどを含めた関心度調査を実施した。
【調査 日時】 2016年3月17日(木) 10:30〜16;30(17:00終了)
【調査 会場】 京福電気鉄道株式会社(嵐電)嵐山駅 RANDEN-PAB
  調査対象者は、嵐電駅構内で時間待ちの方などをリクルーティング
【調査対象者】 50組 135人
  アメリカ24、イギリス2、インドネシア4、オーストラリア7、オランダ1、
  カナダ15、韓国16、スペイン3、シンガポール4、タイ3、台湾18、中国16、
  ドイツ2、フランス2、ベトナム4、ベルギー2、香港12
【調査機関】 NPO法人ツーリズム研究機構
【調査対象者の概要】
1.アメリカ人の数が予想に反し多かったのは、デルタ航空がシカゴ⇔日本キャンペーンUS$50,000を開催中で、席が取れない状況だそうで、結果、はじめて来日という方が多くみられた。
2.オーストラリア人が例年の調査に比較し、少なく思えるが、スキーのシーズンが終わりに近づいていることと今年の北海道は例年になく雪が少ないという情報が伝わっている感がした。
3.韓国は学生のグループが目立った。
4.中国は内陸部(四川省成都、ハルピンなど内陸部からの方が目立った)。
5.香港の方は全員リピーターで半数は10回以上であった。レンタカーで金沢へ行くらしい。(お菓子屋を尋ねられ、俵谷を紹介したら、すぐにタブレトで検索し、「ここ」と行き先をマークした。お菓子屋も目的地になりうる。)

1. 母国でヘルシーなスイーツで何を思い浮かべますか? そしてその理由は?
  @アメリカ人、カナダ人、イギリス人はキャロットケーキ、バナナケーキ。A中国人、香港人は 亀ゼリー、豆腐花(おぼろ豆腐)など。B台湾人は氷。C韓国人は餅の菓子。Dタイ人はマンゴ、ランプータンなどフルーツ。
  という答えが多い。
  【母国のヘルシースィーツとその理由】
@ 欧米系は「母親の手作りのケーキ」代表は「キャロットケーキやバナナケーキ」、添加物など入れないし作り手が一番信用安心できる母親。しかし、材料までは 言い切ることはできない。
A 韓国の方々から「身土不二」の言葉が聞かれた。農産物(土)と体は一緒で、地域の安心なものを材料にした昔からの「餅」菓子があげる方が多い。また胡麻や松の実など漢方と関係する材料のものという言う意見も。
B 香港人は「医食同源」と。亀のゼリーや食事のデザートメニューを挙げた。学生から「豆腐花」(おぼろ豆腐)のスィーツが人気であると。
C 台湾人は、カロリー数が少ない「氷」デザートにフルーツを添えるのが圧倒的に多い。年配の方が昔からの、「ちまき」をあげた。
D タイの方が、抹茶のスィーツと笑いながら。タイではやっているらしい。
E インドネシア、シンガポールなど東南アジアでは、フルーツそのままでが。
F 中国人が、「ヘルシーな菓子を考えたら、中国では食べられないヨ」と笑った。いろいろな意味があるのかも。
   【他にはこんなへルーシースイーツも】
 フルーツや野菜を素材としているものをヘルシーと考える傾向が強い。
(例)パイナップル・ケーキ、野菜のチップス、ドライナッツ、クラッカー、グラノーラ、中国茶菓子、ポプコーン、スムージー、ダークチョコ、お餅、ビスケット、ヨーグルト、豆腐花、等が挙げられた。
  【.健康的と思う理由】
 やはり自然な野菜、フルーツがビタミンも豊富で健康に良いと考えられるから。殆どの人が低糖または無糖、脂質減のものと答えた。中には逆にストレスが解消されるので糖分、脂質があっても(アボカドなど)ヘルシーと考えるという少数意見も。糖質の多いスイーツは全てヘルシーではないと断言した人もいた。
2. ヘルシー・スイーツに求める基準は(複数回答可)?
 聞き取り調査の結果は下記の順番であった。@材料の安全性(72名)、A糖質減(38名)、B脂質減(32名)、Cカロリー減(25名)、D見た目(20名)、Eその他(減塩、ビタミン、ナチュラルなもの)(12名)
 材料の安全性を重視する人が多く、次いで糖分、脂質、カロリーや塩分を気にする人が多い。見た目より成分を気にすることが分かる。特に中国人(富裕層的)は安全性をまず考えるという人が多く、欧米系でもその傾向は見られた。スイーツに関しては甘味が強すぎるものは好まれないが、小豆が思ったより甘くなくてヘルシーで美味しいとの意見が多く、小豆餡のおまんじゅうなども美味しいという人が多かった。また、きな粉はヘルシーなイメージがして、マイルドな甘さが男女を問わすほとんどの人が美味しいとの感想を持ったようである。中には成分が大豆と聞いてヘルシーだと思って食べたところ、甘すぎて想像と違ったという意見もあった。
3.ヘルシー志向から想像する色は?
 @緑 65名 大部分の人が”緑”を挙げた。A色素なしの食材本来の色(自然食) 43名。B自然をイメージする色:25
名 木々の緑や大地の茶色。C赤 12名 苺やリンゴのイメージ。D白・黒 4名  韓国人は白と黒はゴマなどのヘルシー食品のイメージ。
 ほとんどの人がヘルシーカラーを緑としていることから、抹茶も食べる前に色からヘルシーなイメージを抱き、抹茶味をより美味しいと感じたのかもしれない。海外のお菓子の中で緑色をしたものは少なく、抹茶菓子が更に好んで受け入れられるような気がする。色の効果がもたらすものは大きいようだ。

4.この旅行で気に入ったお菓子は?
(1)人気アイテムは@いちご大福 22名、Aポッキー 12名、B抹茶アイスクリーム 10名、
   C抹茶ケーキ 8名、その他、抹茶・梅キャンディー(2)、餡子餅(3)、おたべ(3)、
  団子(2)、八つ橋(2)、 白い恋人(2)、カステラ(2)、プリン(2)、どら焼き、わらび餅、
  きな粉アイスクリーム、あられ等。
(2)気に入った食べ物としては、@寿司(28)、Aラーメン(16)、B麺類(14)、C天ぷら(12)、D丼物(14)、
  Eタコ焼き(10)、Fステーキ(6)、F懐石料理(6)、Fさしみ(6)、Fすき焼き(6)、F味噌汁(6)、Fお好み焼き(6)、
  L焼き鳥(4)、その他、しゃぶしゃぶ、おにぎり、豆腐、納豆、漬物、焼き魚、からあげ。
(3)お菓子でお土産にするには@抹茶類の御菓子(12)、A東京バナナ(6)、A八つ橋(6)、A白い恋人(6)、
   大阪バナナ(4)、餅(4)、キットカット(4)、ポッキー(4)、チーズケーキ(4)、抹茶、明治チョコ、ロイスチョコ、
   アメリカにないスイーツ、わらび餅、パッケージの可愛いお菓子、いちご大福、梅キャンディー、煎餅、など。
   スイーツは買わない(10)という人も少なからずいた。
5.その他ヘルシー・スイーツに関するコメント。
 ・ 色など見た目を含めて自然なもの(ナチュラル)がヘルシーな感じがする。
 ・添加物を気にする人がほぼ全員であった。(色素、香料なども含まないものが好ましい。)
 ・本日提供したお菓子が無農薬のコメを原料としていると知り、とてもヘルシーで 聞いただけで美味しそうと言った人
  もいた。
 ・甘すぎるものはヘルシーでないと言い切った人もいた。(糖分を気にする人が非常に多い)
 ・チョコあられが中国人に超人気。
 ・日本の調味料を買って帰り、母国で料理してみたい。
※スイーツを含む「食」に関しては見た目と言うより、甘味、塩分、脂質、添加物など人工的なものを除く自然食品に高い興味を示し、食材を気にする人が老若男女を問わず多かった。また必ずラベルの添加物、成分表示をチェックするというが人多く、英文表示は差別化のポイントに。小豆や抹茶は外国人にはとっつき難いと思われがちだが、思いのほか小豆、抹茶、きな粉は大好きと答える人が多く、和のスイーツが十分受け入れられることも立証された。どんな食べ物がおいしかったかと言う問いに対しては、タコ焼き、焼きそば、卵焼き、ラーメン、おにぎり、味噌汁、わらび餅などこれまで寿司やすき焼きなどと聞くことが多かったのが、訪日回数が増えてくると、「居酒屋」など普段気軽に口にするものが意外に受けていることが分かる。また、日本での宿泊がホテルだけではなく、旅館や民宿などに泊まることが増えているのも一因かも。
6.この旅行でベストな経験。
  @着物体験(12)、Aどこに行ってもみんな優しい(8)、Aトイレが綺麗で街がクリーン(8)、C奈良の神社(6)、
  C歴史的な場所、風景(6)、C美味しい食事(6)、C温泉旅館(6)、G奈良の鹿との遊び(4)、Gボート・ツアー(4)、
  G店のサービスのよさ(4)、Gモンキーパーク(4)、G自然の散歩(4)、その他、海遊館、相撲観戦、秩序のよさ、
  銀閣寺、太鼓演奏、日本人の性格、安心・安全である、文化の匂い、お花見、東京、コース料理、札幌での雪見、
  ショッピング、鳩の餌やり、秋葉原、日本人の様々な服装、・富士山を見たこと、スノーボード、ハイキングなど。
※日本人そのもの:道を親切に教えてくれたり、店のサービスがよかったりと人の優さしさ。日本の環境:安心・安全、街がクリーンで綺麗だと多くの人が答えた。人の応対、おもてなしというソフトな部分が訪日客の心を強く捉えている。

7.FITにはこんな方が多い。
 弁護士、会計士、銀行、建築、IT、医療関連、証券会社、教師、マーケッター、エンジニア、コピーライター、公務員、貿易関連、会計士、生命保険会社、広告代理店、セラピスト、エンジニア、大学生など。
※今回無作為で行ったインタビューであったが、インタビューに応じたFITは知的層が多く、金銭的にも比較的余裕のあるとみられる人が多かった。
【FITたちの抽出意見】
@“僕は日本のうどん、お好み焼き、梅おにぎり、小豆のお餅や煎餅も大好きだよ!”(カナダ)
A気に入った食べ物は丼物という答え。中村藤吉の抹茶ケーキと生八つ橋(井筒)が好き。“お土産には大阪バナナだよ!道頓堀が大〜好き!”(台湾)
B「表に透明の窓を開けて中味がみえるようにすればどうか」などの提案。“ラベルの表示、特に成分表は英語を併記して欲しいわね!”(アメリカ)
C食べ方、料理法等が英語で明記されていると助かる。そうすれば材料を買って帰って母国で自分が作ることもできると。外国人にとって食べ方が明記されていれば購入し易い。(アメリカ)
D日本製の包丁は素晴らしい。料理好きなので、国に帰って日本の包丁で料理するのが楽しみ。“日本の料理包丁はクール! 絶対買って帰るよ〜”(ドイツ)
Eスイーツをお土産にしないと答えた人も少なからずいたが、スイーツをお土産にする場合は可愛くて綺麗な包装を。(アメリカ)
Fスイーツは買わないと言いながらも最中は美味しかったと。味噌、大根の漬物、焼き魚が好き。(アメリカ)
Gは大豆で作られているお菓子と聞いて甘くないと思って食べたところ甘かったので驚いた。(アメリカ)
H日本の流行りのお菓子を買いたいとのこと。いろんなお菓子を知っていて、その情報の入手先を聞いたところ、インターネットでドラマに出てくるお菓子を調べ、実際に食べてみたいとのこと。 ネット情報が食にも多くの影響を与える。
お土産には明治のチョコとのことで、ブランド名も上げた。上海では女子はみんな毎日午後3時には必ずお茶とお菓子の時間だよ!”(中国)
I納豆が気にいった。また餡のおまんじゅうも好き。きな粉味が好き。(カナダ)
J“デルタ航空チケットの割引のお蔭で日本に来られたよ!”(アメリカ)
K韓国人の家族連れが少なかった理由は、すでに韓国の小学校は3月から授業が始まっていたから。(韓国)
L 京都での初日にお菓子やお茶を頂いてお話しできて嬉しかった。(カナダ)
【日本旅行中に感じたこと】
@行き先に関してはスマホ等で地図上の情報が簡単に得られる。日本人はみんな親切で、道を探していると必ず寄ってきて教えてくれるので道に迷って困ることは全くなかった。
A道路が狭く、自転車専用道路がなく、自転車が歩道を走るので非常に危険を感じた。
B道にゴミ箱が見当たらず、ごみの処理に困った。(何人もから同様のコメントがあった)
C町が非常にクリーンである。
D駅の駅員までもが「ご乗車有難うございます。」などと車内のマイクで挨拶したり、どこでもだれもが親切であると口々にコメントしていた。
【多くのFITの意見を聞き取った調査ディレクターの感想】
 FITの日本への印象はやはり日本人の応対の親切さや優しさ、店での丁寧なサービス、挨拶を欠かさない人たち、など所謂 ”もてなし”に尽きると言える。ハードな部分と同時にソフトな部分が非常に重要であると考えさせられた。
 渡月橋など嵐山近辺を散策している人の中に、外国人の数があまりにも多いのに驚かされた。時に目立ったのが多くの外国人女性の着物姿であった。聞き取りの際でも滞在中ベストな体験に着物体験と多くが答えていたことからもその人気が分かる。訪日回数が増えるにしたがって、単なる観光ではなく、出来る限り普段の日本の文化や生活様式に触れて実際に体験してみたい、外国人用に特別なものではなく、日本人と一緒の体験をしたいということであろう。「お・も・て・な・し」はそれを踏まえたものでなければならない。
 長年、行政で国際交流の仕事に携わってきたが、「目から鱗」的な一日であった。(2016年3月)
※2013年度『 “橘街道”スイーツ街道関西プロジェクト』 関西地区(兵庫県、京都府)より
          (2013年度経済産業省クールジャパンの芽の発掘・連携促進事業)
※2014年度 『橘街道プロジェクト』 (兵庫県、京都府、大阪府、奈良県、和歌山県)より
          (2014年度内閣府の地域資源活用ネットワーク構築事業)より
※2015年度 『 ヘルシー志向菓子業者のネットワーク構築と新市場創出事業』 (全国・香港)より
          (2015年度経済産業省の「新分野進出支援事業(地域イノベーション創出促進事業)・
           個別プロジェクト支援型」採択事業)
※「神戸・兵庫の郷土史Web研究館/地域創生・ツーリズム研究所」のホームページより転載。

当研究館のホームページ内で提供しているテキスト、資史料、写真、グラフィックス、データ等の無断使用を禁じます。